日本縦断ツアーの報告書です。 今回は、プロローグ編、7月27日の報告です! |
□7月28日;「始まりの地はかくも遠く」 <走行記録> 天気;晴れ 距離とアップ;113.87km、1300up 最高時速;43.5km/h. 平均時速;19.9km/h. ルート ;国分キャンプ場〜垂水〜大根占〜佐多 宿泊 ;大泊キャンプ場;無料、トイレ、水、あり。本土最南端のキャンプ場(だと思う) 入浴 ;さたでい湯;佐多の集落にある銭湯。きれいでのんびり、300円。 <道路情報> ・ 国道220;亀割峠は割りと楽。その後はフラット。 ・ 道の駅垂水は足湯があっていつでも利用可能。 ・ 県道68;アップダウンが始まる。晴れれば景色は最高に綺麗。 ・ 国道269;リアス式海岸を髣髴とさせるアップダウン。けっこうガッツリ上らされる。 ・ 県道68;佐多岬へいたる難関路。エグイ!水は充分にもって行ったほうが良い。はっきりいって山。 <報告書>「始まりの地はかくも遠く」 夏は夜。 それは今も昔も変わらないのだろう。 昨日の夜は真夜中の4時ごろまで同じキャンプ場の客(若者達)による花火大会で全く眠れなかった。 自分でも、相当悲惨な顔をして、27日の朝を迎えることになり、とりあえず、ラジオ体操でむりやり体に一日の始まりを知らせる。 昨日お世話になったチャリダーの先輩にお別れを言って、半分しか開いていない目をこすりながら、ぼくは南へ向かった。 しかし、すぐに嫌でもぼくの眼はギンギンに見開かれる事になった。 暑い!暑いのだ! 蝉の声がラジオのノイズのように頭に響き、じりじりとアスファルトが焼けていく音が聞こえるようであった。 とにかく!前を見て!(というか睨んで)、ぼくは走り続けた。 峠を越えて、垂水につくと、今度は腹痛に襲われた。 仕方ないので、道の駅でトイレ。 ここの道の駅は非常に良い。トイレは綺麗だし、足湯もあるし、なんといっても、桜島と青々とした海を眺めるには絶好のロケーションに建っているのだ。お腹を押さえながら、やああって、ぼくは半年ぶりの桜島を仰いだ。 その後、立ち寄ったのは、国道沿いにある、小さな漁港。 今から4,5年前にある映画の撮影のロケになった港だ。 この映画は、高校のころ授業で扱ったのでわりと記憶に鮮明だった。 とりあえず、そこら辺に居る地元の方に話しかけてみると、いろいろロケ現場を案内してくれて、かなり楽しめた。 旅をしていると、地元の人々からの情報収集は必須になる。 普段、東京で暮らしている時は、見知らぬ人にいきなり話しかけるなんて絶対ありえない事なのに、いったいどういうわけか、旅をしている時には、普通にそんなことをしている自分が居て、ちょっと不思議だ。 旅をしているという気分がそうさせているのか、この重々しい旅人装備と自転車のせいなのか、それとも、こんなことを普通に出来る、そんなぼくが本当のぼくなんだろうか・・・。 県道68号に入ると、やはり上りが始まった。 しかし、この頃は幸せだった。 暑い、でも、その暑さに応えてくれるだけの、入道雲+スカイブルーの夏模様全開の空と、透き通った南国の海が満喫できたからだ。海岸沿いの海水浴場の喧騒も、小さな島に立てられた真紅の鳥居も、地元の人とのちょっとした会話も、なにもかもが美しくかけがえの無いもののように思えた。 |
それでも、道の駅根占の食堂で昼ごはんのうどんを食べるころには、柄にも無くぼくは疲れきっていた。 目の前に広がる海水浴場を見ながら、あの海の水はもう温泉のようにあったかいんだろうなあ、なんて思ってた。 なんといっても、少し前に買った飲み物を自転車のキャリアにくくりつけていると、速攻でお湯になってしまうくらい暑かったのだ。 今から佐多に向かう元気がもうなくて、しかも、道の駅にはキャンプ場が敷設してあった。 妥協するなら今だ! ―――だが、昨日の先輩チャリダーとの会話がそれを阻止した。 「一日で大泊まで行きたいんですけれど」 「いや〜〜、それは無理だろ〜。この暑さだし、あそこまでの道のりは相当きついよ。 きっと途中で音を上げるって」(きっと途中で音を上げるって…きっと…)←エコー いや、上げない! ここで妥協してしまっては、これからの日本縦断なんてできるもんか!なんたって、今は「プロローグ編」なのである。 そこで、ぼくは初めてラジオなるものを取り出し、なにか元気の出る曲をFMでチョイスして、無理やり夏ばて気味の体を鞭打って出発したのだった。 佐多の町。 最果ての町である。 ここからさらにがっつり地元の人でも敬遠する県道を進まなければならない。 そこで、今日と明日の食料、水を買出しして、地元の人に聞いた銭湯へ向かって最後の難関への準備をする事にした。 銭湯は、ちょうど市民公民館に敷設した感じのわりと綺麗な建物だった。 銭湯に入ると受付では地元のおばあさんが迎えてくれた。 しかし、ここでちょっとしたハプニングがおこった。 「えっと、大人一人、いいですか」 「ええ、後ろの入浴券を買ってからお入り下さいね。」「どーも」(といって、券を買う) 「じゃあ、こちらになります」(女湯を指差して) 「え??え?そっち女湯ですよ」 「そうですよ、だからこっちになります」 ちょっと、待って!ぼくは女じゃない! 「ぼく、男、なんですけれど」 「ええっ!!」(・・・どーしてそんなにおどろくんだ泣)「だって、声が女の子じゃないですか」 「すみません、声変わりしてないんです」 「顔も女の子じゃないですか…」 「いえ、あの、髪が伸びてるだけなんですけれど。童顔だからかなあ…」 「す、すみませんでした! あの、男湯は、こっちです。」 「ですよね。」 「すみませんでした」 「…いいんです。…慣れて、ますから」 よくないッ!! どうしていつもこうなんだろう。 確かに、髪は肩まであるけどさ〜〜。あんまりだよ。。。 こうして、今回の旅に新たな目標が加わったのだった。 「この旅を通して、男らしくなる!!」―――これだ! ふふふ、日本縦断したら、さすがに男の中の男に慣れるに違いない! きっと、そうに、違いない! やはり、最後の県道は難関だった。 きつい上り。 灼熱の気温。じっとりとまとわりつく湿度。さっきからラジオはノイズしか流れていない。 だが! それを乗り越え、大泊の集落(といっても日本最南端の郵便局その他のある、小さな集落だが)についたときの感動はひとしおだった!目の前には佐多岬へ通じる有料道路も見える!とりあえず、今日はもうキャンプ場へ行こう。 と! いきなりぼくを有料道路の係員のおばさんが呼び止めた。そして、あれよあれよという間に、止まっていたバスに乗せられた。 実は、このバスは本日最終の佐多岬行きのバスだったらしい。 運が良かったのか、悪かったのか(明日、自転車で行こうと思ってたのだが汗)、とりあえず、なりゆきに任せてバスに乗った。 自転車その他の荷物は係りのおばさんが見ていてくれるらしい。ありがとうございます。 そしてバスは本土最南端に向けて出発したのだった。 そして、最南端のバス停に来た。 途中、客が一人しか居なかったので、バスの運転手さんとの会話が弾んだ。 運転手さんはチャリダーにここまで佐多岬が知られている事に大層感激なさっていた。 ぼくが自転車でこの道をいけないことに不平というと、安全上の問題だから仕方ないといって、その代わり、一応合法的にいける自転車最南端のバス停までの道を案内してくれた。 そして、佐多岬。 途中、超強大なアブ、蜂の無差別攻撃を受けながら、たどり着いた佐多岬。 向こうには岸壁に白亜の灯台。 おなじみの佐多岬の看板。 このなんでもない看板は、ぼくのとっては最高に大きな意味をもつ。 ここが始まりの地だった。 先のことは考えない。 気が遠くなりそうだから。 でも、ここからは、ぼくのとる進路は、ただ、北にのみ向かう。 そういうのは解りやすくて好きだ。 さあ、ここからひたむきに頑張ろう。 やっと、やっと、始まったんだ。 日本縦断! |
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