日本縦断ツアーの報告書です。 今回は、近畿編、8月8日の報告です! |
□8月8日;敦賀の長い夜 <走行記録> 天気;晴れ 距離とアップ;122.24km、600up 最高時速;45.5km/h. 平均時速;18.5km/h. ルート;京都〜大津〜小野〜高島〜敦賀 宿泊;野坂いこいの森、交番;野坂いこいの森、無料で月曜は休み。人がいないときは止めといたほうがいいと思う。 入浴;越の湯;600円のスーパー銭湯。ほとんどテーマパーク。お風呂めぐりが好きな人はお勧め! <道路情報> 国道2号;山科までけっこうきつい。 国道161〜県道304〜県道333;自転車道が整備、スピードは出せないがかなり走りやすい感じ。 国道161;この敦賀に抜ける道、追坂峠のあと、県境までがかなりきついと思った。水がなかったから? <報告書> 「コォラァァァ!!!」 真っ暗闇の山の中に、壮年の男の怒号が響いた。 敦賀の山の中、ポツンと外灯の立つ小さな広場の、その外灯の下に、張ってあるこれまた小さなテント。 男はそれに向かって吠えたのだった。 車は広場の前の車道で吹かしてある。 「はぁ、これで3人目か……。」 テントの中には、一人の旅人がいて、さっきから息を潜めて、外に出る機会をそっと窺っていた。 「一応最悪に、備えとくか……。 にしても、やってらんないよなぁ〜〜あはは。」 旅人は、うでまくりをしながらぼやいた。 「さて、行きますか……!」 この日の朝は、あまりに透き通った青空だった。 ぼくは、早めに京都を発って、山科を越え、逢坂の関を越えて、琵琶湖へ向かった。 琵琶湖の西岸、いわゆる湖西。 ここは自転車道が整備され、東側よりもずっといい意味で都会でない。 あたりには田んぼが広がり、ここちいい青青とした風が香る。 史跡も色々あって、好きな人にはたまらなく、同時にキャンプ場も多いので安心感もある。 そんな、琵琶湖をぼくは走っていた。 この日は大津で夏の花火大会があった。 行った人によるとそれはそれはすばらしいものらしいが、ぼくは出来るだけ進みたかったので、これは次回の機会にまわすことにした。 さて、この琵琶湖には、海水浴場ならぬ湖水浴場が点在する。 そのくらいに、この湖は広く、海水浴の客、が砂浜を走り回っている。 本当にここが湖なのか、と疑いたくなる景色がそこには広がるのだ。 このあたりはずっと平坦で、進みやすい。 ようは、国道161を直進すればよかったのだが、ぼくは、県道に入って、出来るだけ湖の湖岸を走ろうと努めた。 ラジオと蝉の声が拮抗するくらいに、あたりは夏で、走りながら右側の松林をみると、そこの隙間から青い水面が顔を覗かせる。 空にはちゃんと、入道雲が勢いづいていて、ラジオ番組では「ひと夏の恋」とテーマにリスナーからの体験談とリクエストを流している。 最高に、夏だった。 県道沿いに、しんあさひ風車村という道の駅があるのだが、ここはすばらしい。 メルヘン街道と呼ばれる、絶景の道路。 その先に、ある、風車と花畑の道の駅。 ぼくは大分前から水が切れてしまっていて、ひいひい言いながら走ったのだが、それでも十分に楽しめた。 道の駅で、ライダーたちと話して、お昼を食べて、昼寝をする。 そんな最高に贅沢な時間なのだ。 |
さて、道の駅から、さらに北上すると、遂に、滋賀県と福井県の県境、追坂峠だ。 しかし、この峠は、随分と楽。あっという間に越えてしまう。 だが、問題はここから。 なんと峠を越えたはずなのに、上りは延々と続くのだ。 しかも、速攻で水が切れたので、さすがに苦しかった、 ラジオでは、「スタンドバイミー」のテーマが流れていた。 ここで、負けるわけにはいかない!そんな気持ちにさせてくれる音楽。 こんなときラジオって偉大だよ、って思う。 この曲をこのタイミングでリクエストしたリスナーに感謝! 敦賀に着いた。 とはいっても、ぼくはこの日はここまで来るつもりはなかったので、夕暮れ時に急いでテント場を探さないといけなかった。 とりあえず、マップルに載っている「野坂いこいの森」に決めて、近くの郵便局で銭湯の場所やキャンプ場の場所を聞いた。 さすが、プロフェッショナルなだけあって、詳しく教えてくれた。なんだかんだ言って、郵便局は親切だ。 そして、銭湯に入って、(ここの銭湯がまたいろんなお風呂があって楽しかった!)買出しをして、キャンプ場へ向かった。 随分と迷ったが、地元の人に何度か聞いたらみんな親切に教えてくれた。 キャンプ場についた。 下には管理事務所(というか青年の家)らしきところがあったのでいってみると、鍵がかかっていて反応もない。 しつこく、ドアをたたくと、なかから、恐ろしく無愛想な人が出てきて、本当は今日は休みで泊まってはいけない、なんていうので、そこを無理言って泊まらせていただくことにした。 普段は人が多いらしいが、休みだけあって、誰もいなかった。 このキャンプ場は、かなりの山の中にあって、大分登ったので、ぼくは疲れ果てて、テントを作って、すぐに横になった。 あたりは、静寂に包まれた。 静寂を突き破ったのは、車の排気音と、こちらに近づいてくる男の足音だった。 ぼくはそっとテントから外を見る。 30代なかばくらいの男が、ぼくのテントにまっすぐ近づいてきて、うろうろし始めた。 ぼくが「こんばんわ」というと、男はいきなりドスの聞いた声で「おまえなにやっとんや??おまえなんかに話しかけられる筋合いねぇんじゃ!!」などと切れてきた。 え?ええっ?? 予想外の反応に、驚くぼく。 すると男はテントまで来て、散々にぼくを怒りとばした。 とはいっても、怒られることもしていないので、こっちも言い返して、バカにしてやった。 随分と、手馴れた喧嘩の売りようだったが、ただの酔っ払いだろうとたかをくくっていたのだった。 久しぶりに、人に不親切にされて、貴重な体験をしたなあ、と感慨にふけっていると、今度はまた別の車がやってきて、また壮年の男がぼくのテントの周りをうろつき、自転車の前でこっちをみら見つけ続けたのだった。 さらに、3台目の車も、かわるがわる登場。 こっちに「コラァァァ!!」と叫んでくるので、ここら辺でやっと、相当まずい展開に自分がいるという確信を持ったのだった。 すると、友人のチャリダーから電話がかかってきた。 今までもなんどか電話してくれたチャリダーだが、ぼくの現状説明を聞くと、さすがに警察に電話したほうがいい、と提言してくれた。 確かに、一度に数人の男を相手に喧嘩をしては、ぼくを含めて、死者が多数出るのは確実な気がした。 さすがに人生初の110番は気がひけたが、それはそれで美味しい体験だったので、思い切って、電話してみた。 携帯は、偉大だった。 すぐに警察につながり、5分後ぐらいに、パトカーが来て、そして、その男達を一応追い払ってくれた! 警察の人は本当に親切だった。 そして、ぼくは安心して、テントの中の寝袋に入った。 しかし! 警察が去った後、今度は、暴走族がやってきて、テントの前で止まって、爆音を鳴らし始めた。 なぜだ〜〜??? あまりに、不遇な展開に、自分でも驚きの連続だ。 というか、すっかり眠気が覚めてしまったではないか!! とはいっても、このままここで夜を明かすのは危険だろうと、判断。 ぼくはこのキャンプ場から出て行くことにした。 まずは! このキャンプ場の管理事務所に文句言ってやる、とおもって、真っ暗な深淵の中を管理事務所まで行くと、軽くあしらわれて、バイバイ、といわれた。 一瞬、腹が立ったが、そんなんにかまっていられるほど、ぼくは元気ではなかった。 そのまま、真っ暗な道を、手探りで進んだ。 この危機を万が一、脱することが出来たら、いい土産話になるなあ、なんて考えながら、凡そ危機的状況の中を黙々と進んだ。 まよって、迷って、迷った挙句、ついたのは、交番の前だった。 すがるように、交番に入ると、さっきの警察官の方が迎えてくれた。 最近治安が悪いからねえ、といって、ぼくを交番の横で寝かせてくれるとおっしゃってくれた。 さすがに、ここに奴らはくるまい。 というわけで、交番横に颯爽とテントを張って、警官にお礼をいい、ぼくは、やっとこの長い長い夜に終止符を打つことが出来たのだった。 後日談; 次の朝、ぼくが起きると、警察官の方は見回りに出ていらっしゃったのでお礼の書置きをしてぼくは出走した。 地元の人たちの話を聞くと、最近、敦賀の治安は悪化していて、暴力団の若い層が、暴走族と絡んでうろついているらしい。 どうやらぼくは、ちょうど、そいつらの集合日の、集合場所のど真ん中にテントを張ったらしいと考えられる。 野宿の前には地元の人に治安を聞くのは、けっこう重要だということを実感した体験だった。 |
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