□2005年度、第29回、伊豆・戸田マラソンの報告書、後半です。 ・開催日;2005/10/30(曇りのち晴れ) ・42.195km,延べ1000up |
<報告書〜後編〜> 10月30日5時、起床。 朝っぱらから、いきなり目が覚めた。 急いで、携帯をみる。 妹からの応援メールが来ていた。 待っても、待っても、応援メールが来ないので、こっちから「応援して」なんて切ないメールを送ったら、「また変なことを(汗)」という返信が来たのだ。「また」ということろが痛い。 それでも嬉しいのだから、“兄バカ”と友人たちから言われてもしょうがないかもしれない・・・。 だが! 彼女にはわからないのだ!お兄ちゃん他、体育会の勇士が胸に抱く淡くも熱いロマン=戸田マラが! 朝食は、ちからうどんだった! ほうれんそう、おもち、などなどいっぱい入って、いかにも頑張ってくださいという感じ! わくわく。 それから、出走の7時までしばしの時間があった。 皆、緊張でいっぱいだった。 そして、一抹の不安も抱えていた。 ウンディーネ(身体的排斥物の総称の婉曲的表現)をいまここで、全て出し切ってしまわないといけないのだ。 走っている途中に、ウンディーネは到底出来ない。もちろん、我慢もできない。 だから、みな、もんもんとして、トイレでうなりつづけたのだった。 そして、出発時間前、いよいよそのスタート地点である、戸田の灯台前に来た。 みな、ストレッチをしたり、ランニングをしたりとやる気満々だ。 ぼくも、軽く走って、体をほぐした。 そして、出走時間。 10秒前からのカウント。 10、9、……ああ、なんてわくわくするんだろう! 何が待っているんだろうか、ぼくを。 8 、7……もう、本当に、楽しみで、そして不安だった、それが今、始まる!! パン! という破裂音と共に、 選りすぐりの武士(もののふ)達が一気に走り始めた! 戸田マラソンの始まりである。 |
とりあえず、 今回の目標は、自転車部の連中の中で一番になることだった。 他の連中は、やっぱ陸上部とか、トライアスロンとか、ベテランの選手(たしか飛走会とかいう名前だった気がする、この字かどうかわかんないけれど)とかがいるので、勝てなくていい。 でも、顔見知りの自転車部には、やっぱ、わざわざチームに入れてもらった恩もあるし、それなりの働きをしたかった。 だから、目標は、知り合いの撃破!だった。 だが!! 自転車部の2年、ランナー君(仮名)がいきなり先頭集団に入り、ぼくの視界から消えていった! まずい! 彼にはなんとしても着いていきたかった。 しかし、もしかしたら、このあとの峠でバテるかもしれない。 一番怖いのがそれだった。 去年、先輩もそれで失敗しているのだ、だから、今回の作戦は「峠でゆっくりいって、下りでも抜かれる。でも、平地で飛ばして他を抜く」という作戦だった。 やがて、峠道へ入っていく。 ぼくは、やはり体力バテが怖くて、ゆっくりと真ん中よりちょっと前の集団についていった。 ランナー君は既に消えていた。 他の、クリリンさん(仮名、以下同じ)、シケ長、ミヤウチくん、自転車男先輩、などはぼくの少し後ろを走っていたようだ。 さて、本格的な峠道だ。 斜度が12パーセントって看板がそこらじゅうにあった。 さすがに、みんなスピードを落とした。 ぐねぐねと延々と峠道は続く。 でも、そこからの田んぼの眺め、その先の海はすごくきれいで、ほっとするものがあった。 ぼくは、自分のペースを出来る限り落としながら、「楽勝〜〜」とか自分に言い聞かせて登っていった。 この「自分で自分に言い聞かせ作戦」は呼吸が乱れていない限りにおいて一定の効果があることが判明した。 峠は長かった、 初めで飛ばして、既に、バテ始めた人がいて、その人たちをぼくは抜いていった。 峠前で、先導のおじさんに、「どうだ〜い」と聞かれたので、 「楽勝ですよ〜〜」と手を振って答えておいた(このときは本当にまだ楽勝だった) そして、峠! とりあえず、水分を補給しようと、「ポカリくださ〜い」というと、水をくれた、オイオイ〜。 ここで水を飲んだのだが、走っていると思ったよりうまく飲めない、 変なところに入って、無駄に咳いた。 下りは、さっきの水のせいで、わき腹が痛くなってこまった。 スピードはいよいよ下降した。 すると、後ろからおじいさんランナーがやってきて、ぼくを一瞬で抜いていった。 早い! 昨日の開会式で紹介されていたから知っている。彼こそは59歳にして、戸田マラ2時間台で走る猛者! か、勝てない。。。 でも、ここら辺の風景は、蜜柑畑が一面にあって、すごくきれいできもちいい。 昨日は雨だったのに、今日は、晴れだ。 ここでかなり抜かれた気がするが、それを感じないほど、ぼくは気持ちよく走れていた。 さて、海岸線の平地についた。 ここから、ランナーは左折して、4キロくらい先で、折り返す。 だから、先に行ったランナーを後から来たランナーは、見ることになる。 左折して少し行くと、な、なに!! いきなりすごいスピードで走ってきたのは、ランナー君!? すでに折り返したのか?? まずい、余裕の表情だ……。 彼を甘く見ていたか! ぼくは、焦って、ここからペースを上げることにした。 折り返し地点で、ポカリを補給。 元気いっぱいに、ここからの平地を走り抜ける!! そして、前を走っていたランナーを抜いて、抜いて、抜きまくった。 さっきの最強おじいさんも、抜いた。 いける、おいつけるぞ! ……と思ったが最後。 なんとしばらく行くと、山の中にどんどん入っていった。 しかも、上り! ぼくは、今回のマラソンの峠は1つだけだと思っていた。 だが、この曲がり具合。 斜度、なにもかもが峠だった! ここら辺には、スタッフの自転車部の先輩や後輩が多くいて、応援してもらった。 先輩から、「ランナー君と19分差!」とか言われて、ちょっと凹んだ。 追いつけるのか?? もう、彼が途中で倒れない限り、追いつける見込みはなかった。 さっきまで「楽勝〜〜」といっていたパフォーマンスも、「マイペースでいきます!」に変わっていた。 そのくらい、この2つ目の峠は曲者だった。 だが、上りが苦しかったのは、ぼくだけではなかった。 他のランナーも苦しかったらしく、ここでも何人か抜いた。 やはり一つ目の峠で力を抜いた甲斐があって、上り自体はかなり楽だった。 |
2つ目の峠、そこから見えたのは、はるか向こうに見える、3つ目の峠だった。 嘘だ。 嘘だろ?? と思いながら、峠道を下っていく。 ひたすら不安だった。実はハンガーノック気味だったのだ。 峠の最下部の補給所で、ぼくは「バナナとポカリ」と叫んだ。 バナナをかじって、ポカリを浴びる。 ランナー君に追いつくのは絶望的。 でも、少しでも早く走りたかった。体力的余裕は十分にあった。 そして、3つ目の峠。 ここで、トライアスロンの先輩方を抜いた。 先輩方は、さすがに上りで苦労されていて、体力的に余裕のあったぼくのほうが、わずかに有利だった。 しかし、 ここで既に30キロを越えている。 だんだん、足が固まってきた。 そして、峠の下りにさしかかった。 さっきからほどんど距離を進んでいない、そんな気がしてきて、焦っていた。 そして、下りでさっき抜いたトライアスロンの先輩に抜かれる気がして、怖かった。 だから、最後の下りは、ぼくは全力で走った。 足を痛めたのはここでのことだ。 それでも、下に下りて、戸田の町についても、まだ体力的に余裕があった。 だが、それなのに、早く終えたい気分に駆られていた。 ゴールする瞬間を考えると、走る気力がいっきにうせてしまうのだ。 町に入る前に信号に引っかかって、警官に止められたのも、精神的に痛かった。 後ろが怖い、早くいかなくちゃ、そう、思った。 そして、最後の3キロ。 戸田の漁村。 その人々が応援してくれる。 もう、「楽勝ですよ」も「マイペースで」もいえなかった、ただ、無心で進んでいた。 苦しくはなかった、でも、ゴールが恋しかった。 最後の、松林、そして、その先のゴールが見えた。 「伊豆・戸田マラソン」の白い垂れ幕、そして、白いテープが張られている、 ランナー君はすでにゴールしていたようだ。 最後、焦ることなく、ぼくは、白いテープを切った。 ああ、楽しかった! これが始めの素直な感想だ。 もっと、苦しいものかと思っていた。でも、楽しかった! そして、すぐに、悔しい! の感情。 ランナー君には、完敗したのだ。悔し〜〜! ぼくの順位は、なんと4位だった! 入賞もできるか危うかったのに、4位とはなんというか、寝耳に水だった。 嬉しいような、ちょっと申し訳ないような、素直に喜びたいような、そんな複雑な気持ち。 そして、ぼくは休憩の真っ青なシートの上に、ごろっと寝転んだのだった。 空は透き通るような、薄水色だった。 |
その後、ぼくはクールダウンもせずに横になったため、足全身が攣って、あとからゴールした先輩方に介抱されるという情けない展開を味わった。 2位でゴールしたランナー君と会って、ご飯食べて、17位入賞のクリリンさんとお風呂に入って、部屋でみんなでだれた。 そして、閉会式。 ランナー君、2位!学内1位!! ぼくは4位!生まれて初めてもらったトロフィー、思ったより軽くて凹んだ(笑) そして、自転車部のチーム「アウタートップ1」(ランナー、ぼく、シケ長)が総合で2位を獲得した! 嬉しかった。 そして、だれもが眩しかった。 最後に閉会式で体育会の先生が言われていた講評が印象的だった。 「うちの学校の生徒は、世間に軟弱だと思われている。だから、もっとも過酷なマラソンをこうして走って、世間をあっといわせてやるのだ!」 ううん、Boys be ambitious!ってやつか〜。 でも、ホントそうだよな。 別に大学だとか、そんなのに関係なく、過酷なことを歯を食いしばってやってる人って、世間をあっといわせる気がする。 理由もないけれど、合理的でもないけれど、すごくかっこいい! 今日、走ったみんなも、最高にかっこいい、と思う。 ぼくは、そんな自分になりたくて、そうして、走ったんだと思う。 だからきっと、走ってるときのぼくは、かっこいいのだ、自分じゃ見えないけれどさ(笑) ちなみに、この先生の講評には続きがあって、こう続く 「世間をあっといわせると共に、自分の体もあっといわせるのです!」 はい、そのとおり、 ぼくの体は「アアッ!!!」といって、 次の日から、靭帯の痛み、筋肉の断裂、などにより、日常生活に大きな支障をきたしましたです。 やっぱ、ストレッチと、クールダウンは重要だね。 それから、そのあと、自転車部OBのO先輩におすし屋さんに連れて行ってもらって、特上寿司を奢っていただいたのです。 ありがとうございました!おいしかったです!O先輩! こうして、戸田マラが終わった。 そして、来年の今頃、また、始まるのだ。 走る前は、楽しみで、不安で、きっと来年もそんな感じなのだろう。 だからそれが終わったときは、もちろん――――――。 |