□河口湖マラソン報告書

<走行記録>
天気;晴れ
距離;42.195km

<道路情報>

河口湖畔を2周するのがフルマラソン。(正確にはちょっと3周)
距離表示が詳しく出ているのでいいし、給水所も完備。
アップダウンはほとんど皆無。



報告書;

「君、強いね?」
…と、鹿児島のユースで聞かれたのは、この春のことだった。
「ええ、強いですよ。」

「マラソンとか、でないのかい?」
「ええ、まだでたことないんですけれど、出たいと思ってます」
「じゃあ、河口湖マラソンがいい。Tシャツとかもらえるよ」
「どんなTシャツですか??」
「ふっ、これだよ…」
―――!!
旅人さんがぼくに見せた完走Tシャツ。
初めてみた、河口湖マラソンのそのTシャツは、一瞬でぼくを魅了したのだった。

それから、半年。
河口湖マラソンに、うちの大学の最強トライアスロンサークル、Doo−upのみなさまの御好意で一緒に出させてもらうことになった。
実は、このマラソンに出るまでには、激しい葛藤があった。
不覚にも、1ヶ月前の戸田マラソンで、膝と足首の関節を痛めたのだ。
整形外科にいくと、間接の骨の炎症だとかなんだとか、言われた。
走ってもいいけれど、痛み出したら、すぐに棄権しなさい、
というので、
できるだけそうします。
と、答えた。
ふっはっは!危険なんてするもんか!!
と、強気のぼくであったが、練習を重ねれば重ねるほど、状態は悪化。
4日前に行なった最後の練習では、5キロで足が痛み出して、10キロ行かないうちに走れなくなってしまった。
ぼくは、バレー部だったので、捻挫や靭帯の故障はなんどかしたが、ちょうど、そんな痛みなのだ。
こうもなると、完走は無理かもな、とか思ってはいた。

といいながら、前日、高田馬場で、ぼくはDoo−upの皆さんと合流していた。
みんな、とても優しく、一癖も二癖もある、最強のオーラをだしている方々だった。
同じクラスのきむしょう(仮名)くん、そして、戸田マラで会った、miura先輩もいらっしゃった。
また、期待の新星、一年のKくんとYくん、さらに2年の方々(始めはみんな先輩だと思っていたorz)、そしてOBの先輩などたくさんいらっしゃった。

さて、我々は2班に分かれて、河口湖へと向かった。
特に、特筆すべきことは、ないが、強いているなら、甲州街道を走っていると、二車線目を走っていたにもかかわらず、何物かが吐き捨てたガムが、我々の車のフロントガラスに、
「びとぉおぉぉっッ!!」
ってくっついてきて、運転手のきむしょう、以下3名は、烈火の如く怒り狂ったことだとか、
高速をケチって使わなかったため、つくのが何故か、6時すぎたことだとか、
受付にぎりぎり間に合わなさそうで、間に合ったことなどがある。
夜は、きむしょうがもってきたトランプで、盛り上がって、やがて、眠った。
明日は、早いのだった。

朝!
河口湖は深い霧に包まれていた!
そして尋常じゃない寒さだった。
朝ごはんは、がっつり食べて(2杯お代わりした!)もはや後すべきことは、ウンディーネ(体内排斥物の婉曲的表現。“ウン”は大きなほうの暗示。また、ウンディーネ=水の妖精、という設定を喚起させることで、小さいほうを暗示する)のみ!!
だが”!
まったく、
まぁぁったく!でなかったのだ。
昨日、ご飯を3杯も食べたのに!
ぐぁぁぁっぁ!
どーしてくれるんだよ!
走ってるときいきたくなったら、どーしてくれるんだよ!
タイムロスなんてもんじゃないぞ!!
くっそ〜〜、くっそーー!

と言ってる間に、ああ、もう出発の時間だ。
仕方ない。
このことは忘れよう。忘れれば、なんでもない。そうだ、ぼくは忘れたんだ。

だが!
入り口前にあった、公衆トイレを見た瞬間!
ぼくは、荷物を先輩に預けて走り出していた。
しかし!
めっちゃならんでる!!(絶対トイレは済ませておくべきだ)
あああ、そうこうしているうちに、もう集合時刻の7時25分を過ぎてしまったではないか!!
どーする??どーする???ぼく!

と、
そうこうしているうちに、遂にスタートである!
先輩方、そして、同輩や後輩のみんなをスタート地点に並び、いざ!出発! ゲスト選手が手を振る中、われわれは勢い良く発進した!!
…といいたいが、そうもいかなかった。
なんといっても1万人のランナーがいるのだ。
待てども、待てども、スタート地点にすらなかなか着かない。
やっぱ、もっと前に並んどくんだった!!

□スタート!


<スタート〜10キロ>

スタートしたぼくは、
どんどんとスピードを上げ、次々を人を抜いていった。
それはそれは気持ちのいいもので、
なによりも、沿道の応援が、最高に元気を与えてくれた。
ちょうど、走り始めて、曲がったら、目の前には朝日に輝く富士山!
ここでぼくのテンションは最高潮に達する!
足の痛みは、感じない。
こんなときのために、足の関節をサポーターなどで完全に固定!
そう、
邪魔な左足はただの棒となってもらうっ!

この作戦が功を奏し、遂に、前にいたmiura先輩を抜いてしまった!
やった!
先輩も「popolo、先に行け」
なんていうものだから、浮かれてしまったぼくは、走り始めて2キロにして、すでに勝利の余韻に浸っていた。
だが!
それは甘甘な妄想の産物だった。
速攻で先輩に抜き返される。
むむむ、と頑張って、再び抜く。
そして、卒なく抜かれる。
やがて、橋を渡った時点(多分10キロ地点くらいか)で、足が痛み始めてきた。
がーーーん!
対策は怠っていないはずだ。
だが、サポーターを強く締めすぎたのか、足が鬱血して感覚が既にやばい。
ついでに、なんか30キロ走りきったような、疲労感が下半身を襲った。
やがて、
ぼくの減速とは裏腹に、先輩は彼方へと消えていかれた。

<10キロ〜22キロ>

その後は、だんだんと修羅場じみてきた。
さっき、抜いた人にどんどん抜かれていく。
もう、25キロ以上走っただろ、とおもって見た看板にはまだ“15キロ”との表示が出ている。
ああ〜〜!
もうだめだ。
足がいよいよ痛い。 やめよっかな〜
でも、せめて一周でもしよ〜
とか思って、まだなんとか持ちこたえていた。

<22キロ〜30キロ>

遂に、中間点をすぎて、因縁の橋を渡る。
ここら辺での減速ップリは自分でも惨めな有様だった。
まったく、足が動かない。
さっきまで足手まといだった左足をかばって、
重心を右に移したら、
こんどは背骨が痛くなってきた。 しかも!
こんなときにかぎって、
ウンディーネがもよおしてきたのだッ!!
なにー!
これは、絶体絶命的展開!
初めは我慢していたが、やがて、痛みすら覚え始めた。
ああ!
すると、目の前にトイレが!
ぼくは、速攻で駆け込んだのだった。
トイレは階段を下にあって、出てきたときは、その階段を登らないといけなかった。
だが、しばらく止まって(足踏みのふりはしていた)しまったので足が固まってしまって、
登れない!
やばい!
ここは棄権時か??

いやっ!
まて!
待つんだ、ぼく。
みんな走ってるじゃないか、まだ、行けるッ!
トイレに行ってからの、走りはいよいよ悲惨なものとなり、おばあさんやおじいさんにすら、どんどん抜かれていった。
惨めだ。とても大学生とは思えん・・・。

<30キロ〜ゴール>

30キロを過ぎると、
もう、ほとんど意識がない。
とにかく、苦しかった。
呼吸器系ではない。足のほうだ。
ああ、さすがに棄権すべきだろうな、
なんて思っていた。
でも、なかなかその機会をつかめずにだらだら走っていた。
やがて、林の道で、ここを過ぎれば道の駅、ってことまできた。
ああ、そこで棄権しよう!

と、そのとき!
「ファイト〜!」
なんていって、すごいスピードでぼくを抜かしていく一人のランナーの姿があった。
一年のYくんだ!
くっそ===!
一年に遅れはとれん!
意地を見せてやる!
と、意気込んだぼくは、必死になって、最後まで走りきったのだった。

ゴールの瞬間はあまり覚えていない。
ただ、足が痛く、だるかった。
常時、ランナーのゴールと共に、マイクでナレーションが入るのだが、それすら記憶にない。
かなり、やばい状態だった。

だが!
目の前にあったのは、完走Tシャツ!
遂にゲットしたのだ!
苦しかったけれど、本当に、きつかったけれど、一度も歩くことなく、完走できた!
沿道の皆さん、Doo−upのみなさん、Yくん、とにかく、みんなに感謝感謝だった。
記録は、3時間40分21秒。
戸田マラのほうが早いという、冴えない結果に終わった。 &
整形外科に直行するしかない状況になったorz

最後になるにつれて、ランナーな少なくなっていった。
でも、みんなの応援は止まらない。
必死の形相で走るランナーを見て、ぼくは涙が出てしまった。
その苦しさを、自分もさっきまでそうだったから、本当に、わかることができた。
あと、もうちょっとでゴール、その直前のランナーの顔は、すごく訴えるものがあった。
タイム以内の最後のランナーは、制限時間2秒前だった。
もう、走れないのでは、といった状態だったが、
沿道の人々がみんなで応援した。
そして、最後のランナーさんは、体をよじりながら、ぎりぎりゴール!
ゴール前のたくさんの人々が一斉に沸いた!
ぼくは、すごく感動して、また、泣いてしまった(だれにもばれないように、ちゃんとあくびの振りをした)

期待のKくんはすごく早くゴールしていて、miura先輩も、手を骨折しているのに、はやり3時間20分くらいにゴール。
実力の差を見せ付けられた。
そして、ぼくを余裕で抜かしていったYくんもぼくより3分早くゴール!
他、みんな無事完走できた。

そのあと、みんなで死にそうになりながら、お風呂に入って、
そして、
美味しい、名物、放蕩(うどんのようなもの)を食べて、
帰った。
本当に、苦しくて、楽しかった!

Doo−upの皆様、お世話になりました。
来年は、ちゃんと足を直して挑みます。
ありがとうございました!!

□名物南瓜放蕩


 
  



――資料と報告書トップページに戻ります。




 


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